JASRACとインターネット


インターネットで音楽コラムを書く以上、いつかは触れねばならないのがこの問題。
そう、音楽著作権についてである。
昨年、何度もリクエストをいただいていたが、都合によりなかなか書けずにいた。
2002年一発目からずいぶんと重いテーマになってしまうがご容赦をいただきたい。

JASRACとは、言わずと知れた、日本の音楽著作権の親玉である。
ほぼ全ての音楽の窓口になっている。
カラオケスナックなどの違法性を指摘したCMが記憶に残っている方も少なくないだろう。
(あれが本質的な違法かどうかはここでは問わない)


現在、JASRACはインターネットの音楽配信に対し、
営利・非営利、ストリーミング・ダウンロードに分けていくつかの料金体系を準備している。
 詳しい料金の一覧はこちら

音楽配信とは、ホームページのBGMやインターネットラジオのBGMなど、
それからMIDIの配信などがあげられる。


有料化したことそのものについては私が大声で文句を言う筋合いのものではない。
様々な問題があろうとも、現段階でそういった権限がJASRACにあるのであれば
それに従うより他に方法がない。
だが、あまりに金額が高すぎることと、
ストリーミングとダウンロードで料金が違うことについては一言言いたくなる。

料金に関しては個々の懐具合もあるだろうから多くは語らないが、
年間1万円(1曲単位だと1200円)は取りすぎだろう。
なぜインターネットでその曲を使うことができるかと言えば
それはその発信者にあたる人物がその音楽を購入したからである。
もちろんそれを違法にコピーして配信したというなら話は別だが、
例えばMIDIにアレンジしたもの、例えばラジオ番組のBGMにしたもの
こういったものに対して再度料金を加算するというのはいかがなものか、と思うわけだ。
まあ、いくらそう思っても決まり事には従わねばならない。
ならばせめて料金を控えめにしてもらいたいのだ。

この問題について、「安すぎるくらいだね」と、
文化人気取りで
「私はミュージッククリエイターに敬意を表します」みたいなことを言うヴァカもいるようだが、
例えば、
 [3曲入り1000円のシングルを買って、]
 [その中の1曲から5分の内2分をBGMにしてラジオ番組を配信しました]
それで1200円はどう考えてもぼったくりだろう?
二重の課金を許すにしてもせいぜい300円がいいところだ。
著作権の名を借りた暴挙としか取ることができない。


次にストリーミングとダウンロードについてだが、
ストリーミングというのは利用者のハードディスクに音を保存せず、
言わばインターネット回線を通過するものを聞くといったイメージである。
だが、インターネットというものはそもそもすべてがダウンロードによって形成されているのだ。
たとえば今皆さんがご覧になっているこのページ
ダウンロードした覚えはないでしょう?ただ見ているだけでしょう?
でも、実際は「キャッシュ」という形でハードディスクに読み込んでいるのである。
音声だって同じこと。
聞き手のパソコンで音が流れるということは、
そのパソコンに音声データが入り込んだということなのだ。
ただ、一般的に、それを再利用できないと言われているのがストリーミングなのである。

これについて料金の差異を設けるにはカラクリがあるらしいのだ。
それはMIDIに関することのようだが私は詳しくは知らない。
知らないなりに調べてみると、つまるところ、
着信メロディの権利を奪いたいがための差異であるらしい。
だが、これについては利用者の反論から読み取ったものなので真偽はわからない。


JASRACに反発するサイトの多くはこのMIDIを配信していたサイトである。
MIDIとは、コンピューター上の楽譜とも言うべきもので、
どの音色をどう流すかというデータである。
なので大変軽い(データサイズが小さい)のが特徴だ。
いわゆるMP3のようなCDからコピーしてはいできましたというものではなく、
自分で楽譜におこすわけなので、「これは私のものだ」と主張する人が少なくないようだ。
確かに、
MP3のように(音質劣化はあれど)そっくりそのままコピーできてしまうものとは同列に置けないが
それでも「元ネタ」がある以上はオリジナルだと主張するのには無理がある。

ここで「あれ?どっちの味方なんだ」と思われた方もおられるかもしれないが、
インターネットラジオを愛する私にとっては、MIDI派の論調は危険極まりない。
たいへん残念なことに、彼らは純粋にJASRACの姿勢を問うのではなく、
MIDIというものの正当性を世に認めさせようとしているだけなのだ。
これは裏を返せば、インターネットラジオのBGMなどはどうなってもいい
いや、むしろそちらを盾に「MIDIは制作したものだ」と主張しているようにもとれるのである。

敵の敵は味方とはよく言ったものだが、
敵があまりに巨大な場合、その味方を盾にどうこうしようという心理が働くのもまた事実だろう。
「あれよりはマシじゃん」という小学生並みの理屈でMP3を盾にしているだけなのだ。



私は何も、違法配信を認めよと言っているのではない。
MIDIを含め、インターネット上で利用されている音楽について
JASRACがカネカネカネカネ口を出すのは身勝手だと言いたいのだ。
歌手のファンサイトでその歌手の曲の歌詞の一節などが紹介されるのは当たり前のことである。
それを目くじら立てて
「こんなところで歌詞を紹介されたら僕の曲が売れなくなるじゃないか!」
と叫ぶ歌手がいるだろうか?
実際問題、それで1枚でも売れなくなるだろうか?
歌詞の紹介はよくてBGMとしてのMIDIはだめなのか、
あるいはページに流れるMIDIはよくてラジオのBGMはだめなのか
まったくはっきりしないまま、我々はJASRACに金を払えと迫られているのである。

そもそも、なんでもかんでも100万枚という最近のCDが売れすぎなのだ。
去年くらいがむしろ自然だと言えるだろう。
それを、鬼の首でも取ったように、
やれMP3のせいだの、やれWinMXで逮捕者が出た(音楽は関係ない)のとやかましいのだ。
大体にして、メディアミックスで売上を伸ばしてきたくせにインターネットは違法とは何事か。
大抵は「おすすめの曲です」と言って紹介するだろう。
それに対して
「応援してくれてありがとう」くらいのことが言えないのか?
いや・・・たとえ歌手がそう言ったとしてもJASRACは権利をふりかざすのだろうな・・・



権利というからにはもっと明確なものであるべきだ。

 CDの歌詞カードの切れ端を道のゴミ箱に捨てて
 「公のゴミ箱に捨てたということは公開も同じこと。権利を侵害された」
 と言うようなヴァカがいるはずがないのだからそれはセーフだな、と。

 CDをそのままパソコンでコピーして販売するのは明らかに違法だからアウトだな、と。

このようにして両端から「権利」の位置を確認すればいいのだ。
それをせずに、曖昧なまま金を取ってやろうとは何事か。
ストリームとダウンロードの違いもはっきりさせないまま料金体系だけ組むなど言語道断である。



・・・さて、
これらの件については、再三の要望があったので今回コラムに書いたが、
私自身、まだまだ勉強不足な部分が多い。
法律的なことについてもそうだが、
例えばMIDI配信サイトでも純粋にJASRACの姿勢を問うているところがあるかもしれない。
私が今回見てまわった10件ほどのMIDI応援サイトは
全て、「MIDIが大事」「悪者はMP3」といった論調だったので、
そのあまりのわがままぶりに腹を立ててしまったが、
私が勉強しなおすことでまた違った面が見えてくるかもしれない。


と、いうわけで、今回はここまでにしておこう。
近いうちにまた機会を設けて考えを述べたいと思う。
皆さんからのご意見などもいただければ参考にさせていただきたい。



2002年2月2日
文責:NAKIMI